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葉緑体の観察,原形質流動と原形質分離HEADLINE


オオカナダモについて
 オオカナダモ(Egeria densa Planch)は,アルゼンチン原産のトチカガミ科の沈水植物で,熱帯魚屋ではアナカリスの名称で,一束(5〜6株)が300円程度で販売されている。長くなると1m近くにも達し,最近は河川でも繁殖している。葉は三輪生が多く,葉身は長さ10〜30mm程度、幅2〜5mm程度で細かい鋸葉がある。単子葉植物なので,春から秋にかけて水上に白い花が咲く。花は三弁の丸い花びらを持ち,雌雄異株であるが,日本では雄株のみが生育する。細胞,核,葉緑体の観察,光合成の実験など,中・高校の生物実験では必須の水草なので,理科室の水槽には常備しておきたい植物である。

原形質流動(Cytoplasmic streaming)
細胞の中にあって,生理的活性を持つ領域,すなわち核と細胞質を合わせて原形質(Cytoplasm)という。植物細胞では,細胞膜の内側にある細胞質基質の領域とほほ同義とされる。生きている細胞では,核および葉緑体などの細胞質の一部が細胞内をゆっくりと動く現象が見られ,これを原形質流動(Cytoplasmic streaming)という。原形質流動は,細胞が生きている証拠とされ,細胞内小器官をはじめとした様々な生体分子を輸送する細胞運動である。厳密には細胞質のみ流動する細胞質流動,核も細胞質も流動する原形質流動があるが,どちらも含めて原形質流動ということが多い。

原形質分離(Plasmolysis)
原形質分離とは原形質が収縮し,植物細胞の細胞壁と細胞膜が高張液下で分離する現象を指す。原形質が分離するかしないかのギリギリの状態を限界原形質分離と呼ぶ。逆に,原形質分離した細胞を蒸留水などの低張液に入れると,吸水して元の状態に戻る。この現象を原形質復帰(Deplasmolysis)という。

浸透圧(Osmotic pressure)
 浸透圧の実験は昔から入試問題などにもよく出題されるが,2001年以前の教科書では,吸水力=(細胞内の)浸透圧ー膨圧=外液の浸透圧 という定義であった。しかし,2001年の学習指導要領改訂の際に,吸水力=(細胞内の)浸透圧ー膨圧ー外液の浸透圧 というように文科省の定義が改められたので注意が必要である。また,下に示したお馴染みの吸水力曲線は,蒸留水などの極めて低張な溶液に浸した場合しか成立せず,海外の教科書でもほとんど使われておらず,日本だけで重視されていることが指摘されている。
 そもそも植物生理学では,水分の吸水という現象は,水の化学ポテンシャルで考えるのが普通である。すなわち,植物細胞の水ポテンシャルは,Ψ=Ψs+Ψp+Ψm+Ψgで表わされ,普通,負の値をとり,水が不足するほど,水ポテンシャルの値は負のより小さい値となる。水ポテンシャルの高い相から低い相へと水は流れ,水ポテンシャルが等しくなれば,流れは停止する。ここで,Ψ:水ポテンシャル,Ψs:浸透ポテンシャル(液胞液に溶質が溶けることによって生じる),Ψp:圧ポテンシャル(靜水圧,細胞壁に囲まれた原形質中に外部から水が拡散することにより生じる),Ψm:マトリックポテンシャル(吸着作用や毛管現象で水が植物に捉えられている力をさす),Ψg:重力ポテンシャル(重力による,高いところから低いところへ流れる力)である。なお,純水の水ポテンシャルは0と定義される。
 

実験1 オオカナダモの葉緑体の観察と細胞の大きさの計測
@オオカナダモの先端からやや内側の若い葉をピンセットでつまみ,ホールスライドガラスに載せる。
Aスポイトで水を一滴たらし,カバーガラスをかけて検鏡する。
B細胞は層になっているので,顕微鏡の焦点深度を調整し,ピントが合うところで緑色の粒子(葉緑体)を確認する。
C次に,平均的な大きさの細胞を3つ選び,接眼マイクロメーターを用いて,細胞の大きさを測定する。 

実験2 原形質流動の速度の測定
@葉緑体は,原形質の中を一定の方向に回転しながらゆっくりと移動しているが,この原形質内の粒子の移動が原形質流動である。
A接眼マイクロメーターを用いて,まず,細胞の大きさ(原形質の長径)を測定する。
B次に,はっきり認識できる葉緑体をターゲットとして,接眼マイクロメーターの数目盛り分を移動するのに要する時間(秒数)をストップウォッチで測定する。
C接眼マイクロメーターの目盛りから,原形質流動の速度(μm/s)を求める。 

実験3 原形質分離の観察
オオカナダモの葉を,いろいろな濃度のスクロース水溶液に浸し,原形質分離の程度を調査する。
@5%,7.5%,10%,12.5%,15%,17.5%,20%の7段階のスクロース水溶液を,それぞれスクリュー管に用意する。
A同程度のオオカナダモの葉をピンセットではずし,表面の水滴を濾紙でふき取り,各濃度のスクリュー管に入れ,10分程度放置する。
B葉をスクリュー管から取り出し,プラパラートに置き,各濃度溶液専用スポイトで封入し,カバーガラスをかけ検鏡する。
C平均的な大きさの細胞を3つ選び,細胞壁から分離した原形質が観察できたら,下図のように,A(細胞の長径)とB(原形質の長径)の長さを接眼マイクロメーターで測定し,100−(B/A)×100 の値を計算し,平均をとり,これを原形質分離の指標とする。
*スクロース水溶液の代わりに,0.1〜0.7Mの7段階のマンニトール水溶液などを用いても良い。

   

 スクロース濃度
(%)
5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0
 原形質分離の程度
(指標)
             




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