オーストラリア訪問記(1993)

                          和田 恵治

巡検                           

 1993年9月,オーストラリアのキャンベラで国際火山学会議があり,それに出席しました.会議の前後および会期中に行われた野外巡検にも参加し,滞在期間は3週間にわたりました.オーストラリアは大陸的な地質を示し,日本列島のような活動的な地震・火山地帯ではないので,日本や北海道の火山と比較するうえで非常に興味があります.巡検では,よく研究された地域を見学するために,フィールドを見る目が養われ,時には新しいアイデアが浮んだりすることがあります.さらに寝起きを共にすることで研究者間の交流も深まり,私自身は,会議よりもオーストラリアの自然を味わえる野外巡検を楽しみにしていました.

 前半の野外巡検はメルボルンに集合し,5日間の日程で,アルカリ玄武岩の溶岩やスコリア丘などの単成火山を見学しました.これらの岩石にはマントル起源の捕獲岩(透明感のある緑色をしており,非常にきれい)が多量に含まれており,30数名の参加者は,宝捜しのように捕獲岩採集に熱中しました.夜は7時前後に食事となりますが,おいしいワインを飲みながら夜中近くまで語らいが続きます.細かい話は聞き取れないので,時間がたつうちにこちらは少々苦痛になります.

 後半の巡検は10月2日〜9日の8日間の日程で行われ,キャンベラから北に向かい3つの盾状火山を順次観察するコースです.参加者は,巡検スタッフ4人を含め13名(日本人1名)でした.巡検のハイライトは,国立公園内の登山コースを歩き,浸食された盾状火山の内部構造が垣間見られたことでしょう.Warrumbungle火山の内部中心には,trachyteのdykeやplugが多数みられましたが,この時は15kmも歩き,気温はさほどでもないのですが,乾燥した空気のせいか1.5リットルボトルの水もほとんど飲干してしまいました.最終日の夕方ブリスベンに着き,案内者のA.Ewart教授の邸宅でバーベキューパーティーが催され,連日の長い夕食時間を締めくくることになりました.

オーストラリアあれこれ

 火山学会議は,オーストラリア国立大学で行われました.広いキャンパスで我が分校の10倍はある感じです.キャンパス内は非常にきれいで,芝生や池・林には動物がたくさんいます.日本人にとっては珍しい動物ばかりです.しかも人を恐れないで自然のままに生きているのです.カラスの鳴き声も違って聞こえました.バード・ウオッチングは最高に楽しめます.オーストラリアの人達も動物をそっとしておいているようです.

 動物もそうですが,植物も見るものすべてが珍しいものばかりです.ブラシやタワシのような花を咲かせるバンクシャの仲間や鮮やかに黄花が満開だったアカシアが目につきました.ユーカリの木もいろいろな種類がありました.しかし帰国して,旭川空港から市内までの車窓の景色をみてハッとしました.紅葉の美しさを再認識したのです.「日本の紅葉はいいな,世界に誇れるな」と思いました.ただ我が街並みはやや雑然としており,オーストラリアの家々が統一された美しさをもっているのと較べると非常にごちゃごちゃした感じです.A.Ewart教授の家もそうでしたが,敷地面積が広いせいか見たところ平屋が多く,家の周囲は緑がいっぱいで,どの家も芝生をもっていました.

 首都キャンベラは人工都市で,すべてが広々としています.道路はロータリーになっているところがたくさん見られます.街中は何かなつかしい匂いがしましたが,7年前に行った時の南米の都市の匂いに似ていました.自動車の排気ガスによる匂いでしょう.ガソリンの価格は日本の半分以下ですが,品質が悪いのでしょうか.

 キャンベラには戦争記念館があります.太平洋戦争で日本と戦った記録が残されています.日本軍の様々なものが同時に展示されています.その中にいわゆる人間魚雷ボートがありました.出征の際の寄せ書きなどを見ていると,胸があつくなる思いがします.

 滞在した3週間あまり,食べ物の味は日本とほとんど違和感がありませんでした.そのため日本食が恋しいということはなかった.ところでバーベキューは,日本のように,鉄板を囲んで焼きながら外で食べるというのではなく,焼き上がった肉を別テーブルで食べるもののようです.公園にはよく,バーベキューのための鉄板焼き器が設置されています.コインを入れると自動的にバーベキューが楽しめます.

オーストラリアは治安もよく住みやすいという印象をもちました.次回チャンスがあればより大陸的な内陸部の方も見てみたいと思っています.