(日本火山学会1997秋季大会要旨)

雌阿寒岳の最近12000年の噴火史

和田恵治(北教大旭川)・稲葉千秋(国際航業)・根本靖彦(砂防・地すべりセンター)

Eruption history of Me-akan Volcano, eastern Hokkaido, during the last 12000 years .

K.Wada (Hokkaido Univ.Educ.), T.Inaba (Kokusai Kogyo Co.), Y.Nemoto (Sabo Tec.)

はじめに: 昨年(1996年)11月21日に雌阿寒岳が小規模な水蒸気爆発をおこしたことは記憶に新しい.雌阿寒岳の形成史はいくつかの地質学的研究(勝井,1951:横山ほか,1976:和田ほか,1989など)からその概要が解明されたが,テフラや絶対年代に関する資料に乏しく,詳細な噴火活動史は必ずしも明らかではなかった.今回,我々は多数の14C年代測定やボーリング・ピット掘削などの調査研究を行った.その結果,これまで不明な点が多かった最近1000年間の雌阿寒岳の噴火活動が明らかになり,過去12000年の活動についても噴火期区分を行い,噴出量を推算するに至ったのでここに報告する.

過去12000年の活動:雌阿寒岳では従来,約1万3000年前に「中マチネシリ火砕流」が比較的短期間に噴出したものと考えられていたが,中マチネシリ火砕流は2〜3千年の間隙をもって3時期にわたって発生した(図1).このうち約12000年前の活動が最も大きく,火砕流は四方に流出し(噴出量1.1km3),プリニアン降下軽石スコリア(噴出量1.0km3)や溶岩流も噴出した.その後約9000年前は螺湾川のみに(噴出量0.1km3),さらに5000〜6000年前は茂足寄川のみに(噴出量0.05km3)流下した.この「中マチネシリ火砕流」を含め,雌阿寒岳の過去12000年の噴火活動は図1のようにまとめられる.4つの噴火期に区分でき,各噴火期の間は1〜3千年の活動静穏期を示す.雌阿寒岳におけるこの12000年間の平均的な1000年当たり噴出量は,約0.18km3である.

最近1000年間の活動:阿寒富士の活動以降,雌阿寒岳の近年 1000年間の活動は,初期のポンマチネシリ降下スコリアを除いてすべて水蒸気爆発による噴火で,少なくとも29枚の火山灰層(Po-1〜Po-29)の堆積を確認した。約700年前にはポンマチネシリ旧火口が形成し,400年前には赤沼火口が開口し山麓にLithic-1(Po-14)が堆積するとともに泥流も発生した.Ko-c2(1694年)からTa-a(1739年)・Ko-c1(1856年)広域火山灰が堆積した約160〜200年の間は,Po-11のみ噴出し地表には腐植が形成された.1856年以降1955年噴火までの約100年の間に,小規模な水蒸気爆発が10回は発生した(Po-1〜10).これらの活動は,旧火口内の青沼火口等や中マチネシリ火口内の小爆裂火口などで行われたものと推測される.