南半球ニュージーランドへ ─原始の自然をもつ国─


和田恵治

 西暦2000年の初日の出は,ニュージーランドが一番乗りだった。私は文部省在外研究員として,98年10月から99年7月まで,南極にも近いこの早起きの国ニュージーランドに滞在した。ニュージーランドは北島と南島からなる島国である。面積は日本の71%だが,人口は360万人で北海道の人口より少ない。1840年以来イギリスがこの国を支配してきたが,先住民マオリ族の文化や歴史もたいせつに守られ,マオリ語は英語とともに公用語でもある。ニュージーランドは,北島は火山,南島は氷河とアルパイン断層という雄大な山岳地形をもち,飛ぶ必要がない鳥たちの楽園となった自然豊かな国である。

 私は,滞在した最初の5ヶ月は,南島クライストチャーチにあるカンタベリー大学地質学教室にいたが,後半は北島にわたって,ウェリントンのヴィクトリア大学地球科学教室に在籍した。クライストチャーチでは,盾状火山バンクス半島へでかけて岩石を採取し,地質学教室でひたすら岩石薄片をつくっていた。夏の日差しは調査にこたえたが,あの青い空とエメラルド色の海がことのほか美しかった。活断層が通る都市ウェリントンに移ってからは,大学が直轄するアパートに一人住まいとなった。坂の上のヴィクトリア大学,その5階にあった私の研究室は,内湾を行き来するフェリー,離着陸する飛行機,高層ビルと民家が立ち並ぶ市街地が眼下に一望できる「特等席」だった。

 教室では,毎日午前10時からモーニングティーの時間があり,セミナールームにみんなが集まる。スタッフはもちろん,秘書や技官・事務の人,院生も参加して,みんなでわいわいしゃべるのだ。午後も3時から再びお茶の時間である。コミュニケートを大事にするイギリススタイルを踏襲しているわけだ。感心したのは,2つの大学とも1つの学科に,コンピュータの専門家を職員として置いていることだ。私のメールアドレスをすぐに与えてくれた。ニュージーランドは行政改革が断行されたとはいえ,事務員の数も多く,我々の大学からするととてもうらやましい。時々ランチタイムセミナーがあって,サンドイッチや果物・ハンバーガーなど頬ばりながら,講演を聞く。金曜の午後は定例の教室セミナーがあって,それが5時に終わると,大学構内にある豪華なスタッフルームでビールを飲んで談笑する楽しみがある。

 どちらの大学でも,私がお世話になった教官が指導する地質巡検に参加した。いづれも1週間から10日という長い期間,教官や院生・学生と寝起きをともにして,火山を観察する旅である。大学生は無邪気だが,日本の学生よりも考え方がしっかりしていた。一人前の大人として扱われ,甘やかされていないということだろう。

 車を購入して,週末の多くは旅行した。人なつっこい現地の人との触れあいが何よりも楽しかった。海外で,異なる人種の中で生活していると,日本とはどんな国なのか,自分は日本人なのだと深く考えてしまう。日本にいれば,日本のことだけで完結してしまうが,日本の外にでれば,鳥の目で地上の世界を見るように,まさに日本をそして世界を意識して考えるようになる。若い世代の人に,鳥になって,外から日本を見つめる体験をぜひ味わってもらいたい。