地震と火山 -旭川は心配ないのか-                          
 1月17日早朝に起こった兵庫県南部地震は日本の社会全体に大きな影響を与えている.なぜ地震予知はできなかったのか.一般の人は素朴に考える.国の予算で大規模な観測網が日本中に敷かれればある程度予知は可能かもしれない.しかし2・3世代先を見越した科学的政策はとられていない.実は,日本列島の国土や周辺の海底で活断層がどこにあるかは,おおかたわかっている.火山の密度と活断層の密度とを単純に較べると,圧倒的に活断層が高い.とくに西日本で顕著である.

 地震と火山噴火は,長期的な時間スケールで進行する固体地球の諸現象の中で,最も急激なエネルギー変化を示す現象である.活断層型の地震の場合,いったん活動すれば短時間でエネルギーが解放されるが,火山噴火の場合は,1991年雲仙噴火に見られるように,時として,長期間活動が続く.

 活断層が動くのは数千年ないし数万年に一度と言われる.活動的な火山の噴火は数10〜数100年に一度の割合であろう.しかし破局的な大噴火は数千〜数万年に一度あるかどうかというところだ.つまり噴火や地震の発生をエネルギー解放と見れば,ある程度のパルス的な周期がある.ここで,ある程度といったのは,周期はあるが規則的ではなく,ゆらぎがあるということである.このことは地震や噴火の予知がかなり難しいことを意味する.

 「地震・雷・火事・親父」といえば昔から恐いものの代表であった.この中に火山噴火が入っていないのは,近畿地方や首都圏には火山がなく,そのため人々は噴火に直面したことがなく,噴火が強く認識されなかったからであろう.火山の近くには人が多く住まないのも事実である.ところが地震は,火山噴火に較べて,広範囲な地域に影響を及ぼし頻繁におこる.しかし,地震は地下で発生するし,地震をおこす活断層も地表のどこにあるかは専門家でなくてはわからないから,われわれは活断層のあるなしにこだわらずに生活している.我々人間の一生はたかだか数10年であり,人間の一生の時間スケールと噴火や地震の活動度の時間スケールの違いを考えれば,活断層の上に家があっても致し方ないのかもしれない.

 日本におこる大きな地震はプレート境界型の地震と内陸の活断層型(いわゆる直下型)地震に分けられるが,旭川市を含む道北地方は,プレート境界から最も遠いところにあり,しかも活断層の密度も非常に小さい.この地域に住んでいるわれわれが実感しているように,平均的に見れば地震に対して最も安全なところなのである.ところがそういうところに人は多く住んでいない.「災害は忘れた頃にやってくる」といわれるが,人間の記憶・忘却のパルスもあるに違いない.

(1995/3)