十勝岳 −30年ほどの周期で噴火をくり返す火山−


(1)概要 

 十勝岳は約50万年前から活動している火山で,十勝岳や美瑛岳・美瑛富士・オプタテシケ山など10個あまりの火山が集まって火山列をつくっています。それらを総称して「十勝岳」とか「十勝岳連峰」,また「十勝岳火山」というふうに呼んでいます。
 十勝岳の火山活動史は古期・中期・新期と3分されています。古期には富良野岳ができました。白金温泉には,中期の白金溶岩とその下に白金砂礫層が露出しています。白金砂礫層は古期と中期の境目の時期に堆積しました。十勝岳山頂部は溶岩ドームでできています。これは中期の最後に噴出しました。新期にはいって(約1万年前),美瑛富士や鋸岳(のこぎりだけ)が成長しました。もっとも新しい過去3000年間の噴火活動は,噴火の堆積物から詳しく読みとることができます。

 最近3000年間の噴火は十勝岳の北西斜面に活動が限られています。いくつもの火口が開いて溶岩火砕流が噴出しました。火砕流の本体部分は白金温泉まで流れました。火砕流のサージ部分(ガスに富む細粒火山灰の多い流れ)はもっと遠くまで流れ下ったはずです。泥流堆積物も最近の調査で何枚も見つかっており,被害が大きかった大正噴火の他に,過去にも上富良野原野に堆積したことが確認されています。

 1857年以降は5回の噴火がありました。1926年には水蒸気爆発に起因した岩なだれがおこり,その崩壊物は残雪を融かして大規模な泥流となって,川を流れ下り,30分以内に美瑛町や上富良野町へ達しました。十勝岳の噴火は粘性の低い玄武岩質安山岩マグマが引きおこすのですが,火砕流をたびたび噴出させるなど,爆発的な噴火をするので,玄武岩に近いマグマといえども穏やかな噴火をするわけではないので,噴火がおこった場合は厳重な注意が必要です。


白金温泉-美瑛川,緊急時には避難通路になるシェルター,火砕流台地の斜面を上がると十勝岳火山砂防情報センターがある。

(2)歴史時代の噴火

1926年(大正15年)-1928年(昭和3年)の活動:

 
1926年に小規模な爆発的噴火をくり返しおこし,その後活動は徐々に衰えて,1928年12月には活動は終息しました。総噴出量はせいぜい2万トンに過ぎませんでした。しかし,1926年5月24日の爆発で中央火口丘の北西半が破壊され,岩なだれとなって崩落しました。崩壊物は積雪を融かして二次泥流となって,美瑛川と富良野川に流木を巻きこみながら流れ下りました。そしてふもとの上富良野原野に達し,144名の犠牲者がでました。崩壊量は300万トンに達しています。

1962年(昭和37年)の活動:
 
1962年6月に爆発的な噴火が始まり,その噴煙柱は高さ12000mにも達しました。噴煙が成層圏まで達するような規模の噴火は,今世紀日本では4回だけしかおこっていません。その一つが1962年の十勝岳噴火だったのです。この時の爆発音または空振は,東は別海町,西は虻田町までも感じられています。火山灰は東の風にのって運ばれ,道東一帯に広く降灰しました。降灰は中部千島列島にまで達しました。噴出量は1億トンと見積もられています。これは有珠山2000年3月31日噴火の100倍以上の火山灰量です。

1988年(昭和63年)-1989年(昭和64年)の活動:
 
1988年12月16日,1962年噴火でできた62-火口から噴火が始まり,水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発を間欠的に23回くり返し,1989年3月5日に終息しました。噴出物の総量は100万トンで,そのうち新しいマグマに由来するのは20%あまりでした。気象庁の職員によって,噴火の瞬間がビデオ撮影されました。赤い火柱があがるとともに黒い噴煙が斜面をかけ下る様子がみられました。それはまさに火砕流が発生したのです。流走距離は1kmあまりで小規模なものでした。しかし二次泥流は望岳台近くまで流れました。この時の噴火では,直径20mの巨大な火山弾が放出されました。また避難小屋のあたりまで噴石を飛ばしています。

噴出した巨大な火山弾



まとめ

1. 十勝岳は,およそ50万前からの火山活動で生じた多数の火山(富良野岳・十勝岳・美瑛岳・オプタテシケ山など)が北東から南西に火山列を作っている。
2. 3000年前以降からの活動は十勝岳北西斜面に集中して多数の火口が生じた。歴史時代の噴火は30年周期で発生している。いずれも玄武岩質安山岩マグマが活動した。
3. 1926年には泥流によって144名の死者がでたが,噴火の規模では1962年噴火が大きく1億トンもの火山灰を噴出した。1988年-1989年噴火では小型の火砕流が噴出した。
4. 泥流に備えた砂防ダムなどの防災施設や住民の避難対策事業が進められている。


文献

Y.Katsui, S.Kawachi, Y.Kondo, Y.Ikeda, M.Nakagawa, Y.Goto, H.Yamagishi, T.Yamazaki, and M.Sumita.(1990) The 1988-1989 Explosive eruption of Tokachi-dake, central Hokkaido, its sequence and mode. Bull.Volcanol.Soc.Japan, vol.35, 111-129。
石川俊夫・横山泉・勝井義雄・笠原稔(1971)十勝岳,火山地質・噴火史・活動の現況および防災対策。北海道防災会議。
石塚吉浩・古川竜太(1998)十勝火山。フィールドガイド日本の火山3,北海道の火山,(高橋正樹・小林哲夫編),築地書館,43-60。
澤田可洋(1990)1988年12月25日の十勝岳噴火。火山,35巻,279-282。

1999防災シンポジウムin 美瑛 美瑛町100年記念「火山と共存するまちづくり」報告書。
北海道旭川土木現業所富良野出張所「十勝岳と火山泥流,富良野川火山砂防事業のとりくみ」(カラー版冊子)。


春の地質巡検
十勝岳 生きた火山の息吹を感じる」2002.5.3(金)へ