3月31日噴火の火山灰・軽石

有珠山では,前兆地震活動のあと,2000年3月31日午後1時7分に,西山西山腹で噴火がおこりました。

この3月31日の噴火では,灰黒色の噴煙が上空3200mあまりまで立ち上がり,それらは上空の西風によって東北東に流されて,火山灰が次々と降下して,地表に降り積もりました(降灰分布図,北大・地球惑星地質調査所)。火口の周辺にはたくさんの噴石が落下しました。

その後の火山灰の分析から,3月31日の噴火は,噴火に直接かかわった新しいマグマ(本質的マグマ破片)が地表に放出されたことがわかりました。この噴火は,マグマが,直接,地下水と触れて爆発的な噴火を行ったマグマ水蒸気爆発とよばれるタイプの噴火でした。

 

偏光顕微鏡下における
3月31日噴火火山灰の写真
(北大・地球惑星製作薄片)

地表に達したマグマの破片は軽石として固結したものです。軽石は非常に細かく砕かれています。サイコロくらいの大きさの軽石が洞爺湖畔に漂着していたのが見つかっています(地質調査所日大)。また砂粒くらいの火山灰でも,顕微鏡を見ると,火山灰を構成する粒子に小さな軽石の破片が含まれています。

これらの軽石は,1977年の噴火で放出された軽石と化学的に非常によく似ていましたが,軽石の全岩化学組成(北大・地球惑星)および軽石に含まれていた磁鉄鉱の化学組成(地質調査所)は,1977年噴火の軽石とわずかに違っていました。このことから,3月31日の噴火で噴出した火山灰に含まれていた軽石片は,本質的マグマ破片であり,1977年の噴火で噴出して地表にすでに堆積してあった軽石が巻き込まれたものではないことが明らかになりました。

3月31日の噴火で放出された火山灰中の軽石の石基ガラス(主に斜長石からなる微結晶を含む)を分析しました。しかし石基ガラス組成では,1977年噴火の軽石とは区別できませんでした(北海道教育大旭川校,以下にデータを示す:地質調査所)。

----------------------------------------------------

石基ガラスの化学組成(2000年噴火軽石および1977年噴火軽石)
 石基ガラスの分析
 石基は,気泡と気泡の間を埋めるように存在するため,非常に細かい。さらに石基にマイクロライト(主に斜長石)が多数含まれるため,石基ガラスの測定は,電子ビームの走査測定領域を広げた分析法を用いているため,非常に難しい。石基ガラスの測定領域に斜長石マイクロライトが含まれることがある。分析値のSiO2, Al2O3, CaO, Na2Oの間に相関があり,斜長石結晶を測定領域の中で,ある範囲内で分析したことが考えられる。とくに,試料の1977年Big.3は,石基が非常に細かく,分析では,斜長石マイクロライトを,他より多く分析した可能性が高い。
 通常のルーチンよりもビーム径を絞っているため,Na2Oの分析値は低めにでている。

軽石薄片の二次電子像(2000年噴火軽石および1977年噴火軽石)
 2000年3月31日噴火の軽石と1977年の軽石の鏡下における組織は,二次電子像の写真に見られるように,気泡の形態が異なる。そのため,2000年3月31日噴火の軽石の石基は引きちぎれたようなとげとげしい形態になっている。1977年の軽石(Big.2)は,気泡がより細かいようにみえ,石基の連結部が太くみえる。

(薄片試料は北大・理・地球惑星科学教室の製作による)