現職教員のための理科スキルアップ研修プログラム開発に関する研究

  北海道教育大学旭川校教授  ○和田恵治・○蛇穴治夫・阿部 修・浅川哲弥・
  北海道教育大学旭川校助教授  古屋光一・大鹿聖公
                               (○発表者)

1.はじめに

 理科は,教師の資質として,実験や観察・野外実習などの専門的能力をより必要とする分野である。
現職教員の実験・観察技術の向上のために,教育大学が,独自の教員研修を企画することによって
小中学校の理科の教育に大きな役割を果たすことができる。
 新しい実験の習得やスキルアップのために現職教員が大学で研修を行う際に,どのようなプログラムが必要であり,
どんなことが現場から求められているのかを探るために,旭川市内小中学校へのアンケート調査を行った。
その結果,小学校教員では大学での出身専攻の違い(理科出身者と理科以外の専攻出身者)によって,
理科への意識・取り組みに違いがあることがわかった。中学校理科教員と小学校教員の間でもそれらに違いがあり,
スキルアップ研修はそれぞれの学校種に対応したものが必要になる。
 このアンケート結果を基に,現職教員にとって苦手意識のある単元を中心に,
研修プログラムで用いる教材の検討・開発を行った。それと並行して,市内の小中学校教員がつくる
理科の実験・観察サークルへ参加しながら,大学における理科研修の在り方を探った。


2.小中学校教員への理科に関するアンケート

 2005年9月,旭川市内・近郊の小学校51校と中学校31校の教員にアンケートを実施した。
質問は30問で小学校教員用と中学校理科教員用に分けて作成した。質問内容は,(1)回答者の情報,
(2)苦手な単元があるか,(3)理科の研修経験,(4)大学の理科研修に対する考え,
(5)理科の授業実態と今後の見通しである。回答はマークシート方式で行い,自由記述の欄も設けた。

2-1.理科の授業と苦手意識 
 教育学部・理科出身の小学校教員では理科への苦手意識をもつ割合は2割程度だが,
理科以外の専攻出身者では約7割が苦手意識をもっており,実験に対する苦手感が高いことや物理・化学分野への苦手意識が
より強いことがわかった。ほとんどの中学校理科教員は教科書にある実験・観察の80%以上を授業で実施している。
また理科出身の小学校教員も実施率は80%以上に及ぶが,理科以外の専攻出身者では70%に下がり,
「現状の教科書にある実験で足りている」(14%)とするのが理科出身者より10%以上高いのが特徴である。

2-2.理科研修への考え 
 教員になってから3回以上の理科研修を受けている中学校理科教員は8割を越えているが,
理科以外の専攻出身の小学校教員ではそれが1割以下に過ぎなく,約6割が研修を受けたことがない。
中学校理科教員や理科出身の小学校教員の多くは大学での理科研修に興味を示し,そのうち半数が参加を希望しているが,
理科以外の専攻出身の小学校教員はその割合が低い。中学校理科教員では各分野の新しい教材や実験・技術,野外観察を
研修内容に望んでいる。小学校教員も全体としては同じ傾向を示すが,理科以外の専攻出身者は理科出身者よりも
物理・化学分野の研修を望む比率が高い。

2-3.大学での理科研修のあり方 
 現職教員には理科の授業内容を改善したいという希望を強く読みとることができる。北海道教育大学の果たすべき役割は
自己研鑽を求める教員に対し適切な教材を提供することであろう。小学校教員への研修の場合,
理科出身者と理科以外の専攻出身者とを明確に区別することが必要と思われる。理科以外の専攻出身者向けには,
物理・化学分野を中心としたプログラムを用意して教師自身の「理科離れ」を改善することが,本来理科に興味を持っている児童を
理科への関心から逸らさないようにすることに繋がると考える。一方,理科出身の小学校教員と中学校理科教員向けには,
新しい教材と野外観察を中心としたプログラムが必要であると考えた。


3.理科研修プログラムの開発

 物理学分野:
 市販されている高価な器具を,身近な所で安価に入手できる素材を用いて作製しながら,
物理現象の原理を学べるような教材を考案した。例えば「光を集めて水を温める教材」や,
「フレネルレンズを使った目の模型」を用いて知識の定着を計れるような教材を作成した。
 化学分野:
 理科出身ではない小学校教員向けには,実験器具の取り扱い,実験の基本操作,基本理論を学ぶための資料を,
そして理科出身の小・中学校教員向けには実験を中心として化学変化について学べる教材や,
身近な野菜を用いた水溶液の性質を調べる教材などを作成した。
 生物分野:
 生物の学習では進化の概念を学ぶことが必要である。そのために児童・生徒にもそのような観点から
生物を見る見方を育てるような教材を工夫することが大切であると考えた。そこで,動物園を活用した教材や,
ニワトリ手羽先の骨格標本を自作しながら,ヒトの骨格との比較を通して進化の事実に触れる教材を作成した。
 地学分野:
 身の回りの地形や地質を観察し,机上で学んだことを現場で調べてみる体験は地学の学習においてとくに重要である。
大地の自然を「教える」ためには,こうした実体験を身につけていることが必要である。
本大学の大雪山自然教育研究施設に宿泊して活火山・旭岳を実感できる地質巡検や,旭川周辺の地質見学で
火山灰や岩石を採取し,それを薄片製作して顕微鏡観察を行う実習を行い,地質を見る力と
岩石を同定する力を養うことに主眼を置いた。