(原文)

編集機能は書き方を本質的に変えた

 ワープロの利点は,「編集機能」と「検索機能」の2つに集約される。まず,編集機能について述べよう。
ワープロで書いている文章は,いくらでも書き直せる。これに役立つのが,「カット・アンド・ペースト」という機能である。ある部分を切り取って(カット),別の箇所に貼りつける(ペースト)という機能だ。これによって,文書を自由自在に編集することができる。
 もちろん,紙でもある程度はこのような編集ができる。消したり書き入れたりできるし,ハサミで切り取って貼りつけることもできる。しかし,ある程度以上直すと,読みにくくなってしまう。したがって,清書することが必要になる。とくに,他人に見せる文書の場合はそうだ。清書のためには,余計な時間がとられる。誰かにこの作業を頼むとしても,できるまでは仕事が中断される。
 ワープロでは,こうした問題が全くなくなってしまった。これによって,文章を書くスタイルは基本的に変わった。文書の作成に関して,紙の発明以来人類が約二千年にわたって連綿と続けてきた方法は,ここ10年あまりの間に大転換したのである。
 スタイルの変化だけではない。「書く」という作業の本質的な性格が変わってしまった。とりわけ重要なのは,文章を書いていく順序である。
 ワープロでは,最も書きたいことを,最初に簡単なメモの形で書く。そして,これにメモをつけ加える。こうして文章が前後左右に広がっていく。
 ある程度できあがったところで,最初から読みながら修正していく。このような作業の繰り返しによって,最終的な作品が自然にできあがってくる。
 この面での変化は,まさに「革命」というにふさわしい。オフィス,書斎,研究室の作業環境は,潜在的には大きく変化した。このような変化に現実に対応できるか否かが,個人や企業の生産性に大きな格差をもたらすことになるだろう。
 自由な編集可能性によって得られる利点としてとくに重要なのは,次の三点だ。
(1)「構えずに」文章を書き始められる(これは,アイディア発想のために重要
   である。)
(2)文章の論理構造を正確なものにするのが容易になる。
(3)雛形の文書を活用して別の文書に加工できる。
 日本のオフィスでは,上司が文案を書いて部下にワープロ清書させるという使い方が非常に多いのではないだろうか。しかし,これでは,ワープロの一番強い機能を使っていないことになる。文案を練る段階でこそ,ワープロの威力が発揮できるのだ。
 ワープロは電子タイプライターではない。清書や印刷のための機械ではなく,編集のための機械であることを認識する必要がある。部下や秘書を補助作業に使うのなら,ある程度できた文案をプリントアウトして朱を入れ,修正文の入力を依頼するのがよい。