雌阿寒火山

 雌阿寒岳(標高1499m)は,北海道東部阿寒カルデラの西縁上にあり,多数の小型火山体が集まってできています.1988年1〜2月にはポンマチネシリ火口で小噴火をおこしました.さらに1996年11月21日に水蒸気爆発がおこり少量の火山灰が(およそ12000トン)北北西方向に降灰し新しい噴気孔ができました.現在,雌阿寒火山は火山性地震がしばしば発生し噴気活動も活発な状態にあります.一方で雌阿寒岳は,堰止め湖の阿寒湖やパンケトー,後カルデラ火山の雄阿寒岳とともにすぐれた自然景観をつくり,そこは,エゾシカやクマゲラが住む針葉樹の深い森につつまれた自然豊かなところでもあります.


火山地形: 雌阿寒岳は,異なる火道から噴出した8つの火山体から構成されます.そのため山頂部は急峻ではなく凹凸のある緩やかな傾斜をなし,雌阿寒岳がアイヌ語でマチネシリ(雌山の意味)と呼ばれる所以です.主要な火山体は中マチネシリとポンマチネシリ・阿寒富士で,このうち中マチネシリとポンマチネシリには噴気をあげている火口があります.山体崩壊地形は,南岳の火口南壁と中マチネシリの南西壁に小規模なものが認められます.

 噴出中心の配列は全体として北東-南西方向にそっていますが,8千年前以降はやや西側に移り,ほぼ南北方向に西山・北山・ポンマチネシリ・阿寒富士の火山体が形成されました.雌阿寒岳の北麓には火砕流堆積物の平坦な堆積面が広がっています.さらにこれらの火砕流堆積物が,阿寒富士や南岳の南麓を除いて,ふもとの河川沿いに分布しています.表面地形の明瞭な溶岩は北西から南西山腹に多く,北山やポンマチネシリの新期溶岩,阿寒富士の多数の溶岩に新鮮な溶岩じわや溶岩堤防が発達しています.

火山地質: 雌阿寒岳の火山形成史は,およそ1万2千年前の爆発的噴火活動の時期を境に大きく3つの段階に分けられます.

 ステージ氓ナは,1042m峰・南岳・中マチネシリ・東岳の4つの火山体が形成されました.中マチネシリの山体は最も大きく,デイサイトおよび安山岩質の溶岩・溶岩円頂丘からなります.東岳は中マチネシリ火山の山腹に成長した小型の火山で,山頂には比較的大きな火口(径約350m)があります.

 ステージは,1万2千年前におこった火砕流や降下軽石・スコリアなどの一連の火砕噴火を指します.雌阿寒岳の噴火活動史においてクライマックスともいうべき時期です.この活動により中マチネシリ山頂には大きな火口(長径1.1km)が生じました.およそ9000年前にも火砕流の噴出や爆発的な噴火活動がありました.

 ステージ。は,西山・北山・ポンマチネシリ・阿寒富士の4つの火山体が形成された時期を示します.また中マチネシリ火口でも小規模な噴火活動がおこりました.西山と阿寒富士は玄武岩質の溶岩・溶結火砕岩・降下スコリアから構成されます.ポンマチネシリは主に安山岩やデイサイトの溶岩および溶結火砕岩・降下火砕物からなります.阿寒富士(2500-1000年前)の生成後1000〜500年前に水蒸気爆発や降下火砕物の活動によりポンマチネシリ山頂火口が生じました.

温泉: 雌阿寒岳の北東8kmには阿寒湖畔温泉街があります.お薦めはポンマチネシリの西2kmにある野中温泉です.ここは含食塩石膏硫化水素温泉でイオウ分が強く,露天風呂もあります.天然のアカエゾマツ林を見ながら湯につかっていると火山の生い立ちが思い浮かべられます.初日はここで一泊して翌日に山頂コースをたどる日程にしましょう.また,オンネトーから20分ほど歩いたところに湯の滝があり,径4mほどの露天風呂があります.