古代において、和歌は特別のものとして、生活の中にいきづいていた。その威力は自明のものであり、さまざまな場面で
その力を充分に発揮していた。しかし、その力はいつの間にか忘れ去られ、外殻だけが今に続いている。
和歌の力は、時々、思い出されることはあっても、すでに本来のものではなくなっている。かつて存在していたその力を、
現在に甦らせることはできないまでも、どうにかしてその力を感じ取りたい、それが研究のモチーフである。
和歌が詠まれた状況や、その和歌によって招来された結果は、歌集や日記、物語などの中に書きとめられている。
しかし、それらの中には、自明であるがゆえに、和歌の力は顕現しないことが多い。
ことばの端々にほの見えるだけである。そういう言語表現を通して、和歌のかつて持っていた力を復元していきたい。
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