表現をどのように整えるか
意味・論理のまとまりと表現の形式
用語を統一する
勉強や仕事のように,つらいこともやる気があれば,それなりの達成感が得られるものだ。だから,人はみな生き甲斐をもつことが大切だ。
▼ | 「生き甲斐」の重要性が,「やる気」の効果で根拠づけられている。同じ概念を,異なる用語で表すと,論証が不十分になったり,論理が一貫していない印象を与えやすい。 |
勉強や仕事のように,つらいこともやる気があれば,それなりの達成感が得られるものだ。だから,人はみなやる気をもつことが大切だ。
接続詞などのつなぎことばを利用する
ぼくが大切にとっておいたケーキがだれかに食べられていて,ぼくは姉があやしいと思ったので,姉のへやへ行くと,ぼくを見て姉はいきなり「私,なにも食べてないよ」と言ったので,やっぱり姉が犯人だった。
▼ | 「~が」や「~して」などを多用すると,文がだらだらと続くため,わかりにくくなったり,焦点のはっきりしない表現になりやすい。 |
ぼくが大切にとっておいたケーキがだれかに食べられていた。ぼくは姉があやしいと思った。それで姉のへやへ行くと,ぼくを見て姉はいきなり「私,なにも食べてないよ」と言った。やっぱり姉が犯人だった。
まとまりで文を区切る
たしかに生活水準は向上しました。でもけっして楽になったというわけではなくマス・コミの影響だと思います。
▼ | 「生活水準は向上したが,楽になったというわけではない」という現状の説明,誤認を生んだ要因「マスコミの影響」というまとまりと,文の区切りが一致していないために,わかりにくくなっている。 |
たしかに生活水準は向上しましたが,けっして楽になったというわけではありません。楽になったかのような意識が生まれたのは,マス・コミの影響のためだと思います。
並立する部分の述べ方をそろえる
現在本を読みたくないという心が,読書しなければ大学の試験に失敗する,国語の教師がうるさいから読もうという心よりも大きい。
▼ | 「読書しなければ大学の試験に失敗する」「国語の教師がうるさい」という理由にあたる部分は並立しているということがわかりにくくなっている。 |
現在本を読みたくないという心の方が,大学の試験に失敗するからとか,国語の教師がうるさいから読もうという心よりも大きい。
係り受けと表現の形式
文法的なねじれがないように注意する
頭に浮かんできたのが,夜海岸で,焚き火をたいて,いろいろなものを,やりたいなと思いました。
▼ | 主部「頭に浮かんできたのが」と述部「思いました」がねじれている。 |
頭に浮かんできたのは,夜海岸で焚き火をたいて,いろいろなことをやりたいなということでした。
入れ子型の文型に注意する
私は |
|
見た。 |
私は彼は妹が言ったことを真に受けて妻を殺したのを見た。
▼ | ことばの係り受けが複雑でわかりにくい。 |
私が見たのは,妹の言うことを真に受けた彼が妻を殺す光景だった。
私が見た |
のは, |
妹の言うことを |
真に受けた彼が妻を殺す |
光景だった。 |
修飾・被修飾の揺れに注意する。
クリスマスまでに,父と母のプレゼントを買っておこう。
▼ | 「父と」は,「母」を修飾するのか「買っておこう」を修飾するのかが曖昧である。 |
(「母」を修飾する場合)クリスマスまでに,父と母それぞれのプレゼントを買っておこう。
(「買っておこう」を修飾する場合)クリスマスまでに,母のプレゼントを父と買っておこう。
読点を効果的に使う
母親は泥だらけになって逃げる子どもを追いかけた。
▼ | 「泥だらけになって」は,「母親」を受けるのか「子ども」に係るのかが曖昧である。 |
(「母親」を受ける場合)母親は泥だらけになって,逃げる子どもを追いかけた。
(「子ども」に係る場合)母親は,泥だらけになって逃げる子どもを追いかけた。
引用文献
例文は,以下の文献から引用した。
- 森岡健二『文章構成法』至文堂,1985年
- 清水義範『大人のための文章教室』講談社現代新書,2004年